小林一茶の里を歩く

 紅葉は終わってしまったが、秋晴れの11月に、「小林一茶の里」柏原を歩いてみる。
黒姫駅を中心とした柏原は、かつて北国街道の宿場町として栄え、本陣・脇本陣を構え、参勤交代の大名行列や
佐渡の金が江戸へ運ばれた交通の要所であった。
 1763年、ここに農家の長男として弥太郎、(後に江戸時代を代表する俳人小林一茶)が誕生した。
紆余曲折を経て、65歳の生涯をここ柏原で閉じるまでの生涯を振り返りながら、今日は一茶の人となりを感じ、
その句に秘められた思いを探るひと時を過ごすことにした。

小林一茶句碑 黒姫駅西口駐車場をスタート地点として、ここに建つ句碑を見る。「こがらしや隣と云うもえちご山」
ここから見える妙高山(えちご山?)を一茶も見たのであろうか…黒姫駅西口より妙高山を望む  跨線橋を渡り、黒姫駅前の
商店街を抜ける。古くから残る民家は少なくなってしまった。
 まずは、一茶の生涯を知るために、一茶記念館を訪れる。
数多くの一茶資料が保存され、子供たちにも解り易く楽しめるよう
ビデオやゲームでも一茶の生い立ちを知ることができるよう展示に
工夫が凝らされている。  1時間ばかり展示物を見て楽しんだ後、
隣にある俳諧時を見学に行く。ここは、一茶の像が祀られ、多くの
俳人が天井に句を刻んでいる。茅葺屋根が美しい小さな庵と言った
風情がある。 さらに奥へ進むと一茶のお墓が有る。現在は、弟の末裔にあたる一族が墓を守り、今も一茶を慕う俳人が多く訪れることで有名である。

一茶堂墓参りを済ませ、菩提寺である明専寺を訪れる。ここにも一茶の句碑「我と来て、
遊べや親のない雀」がある。3歳で母を亡くし、8歳で継母が来るまでのひとり遊びの
寂しさを歌ったのだと伝えられている。境内に立つ大きな銀杏や杉の木、140年前
にはなかっただろうが、ここで一茶も遊んだだろうか…
 かつての北国街道であった現在の国道18号線へ出る。昔は宿場町として本陣を
中心とした屋敷が並び、松並木が街道を飾ったという。今、その賑やかさは影もない。
高速道路が通り、数年後には国道バイパスが建設される予定がある。そうなった時、
かつての宿場町を彷彿とする町並みが戻ってくるとよいのだが…
本陣跡地の看板を左手に見ながら、さらに進むと信用金庫の庭先に古びた松の木が
一本植えられている。これは街道の松がなくなる際に移植され、残ったものだと言う。決して環境がいいとは言えない
国道沿いで、ひっそりと昔を伝える姿はどこか儚げでいじらしいものがあった。
 さらに歩を進めると、一茶旧宅が見えてくる。平成に入って改修整備され、一茶終焉の
地であった土蔵と、弟屋敷が復元され今に至っている。 土蔵横には一茶位牌堂が
ひっそりと佇んでいる。芳名帳にはいまだ絶えることなく各地から訪れる一茶ファンの
足跡が記されていた。柏原、諏訪神社
 柏原宿はずれには諏訪神社が有る。 ここにも一茶の
句碑が建っている「松蔭に寝て喰う六十余州かな」は、
一茶3回忌に弟が宿場一里塚に建てた物だと言う。
この句には季語がなく、江戸時代、俳句が盛んになった頃
お互いに句を送りあって題を繋げて行く連句と言う手法が流行った。その中のひとつ
らしく「松蔭(江戸の時代を指す)は、六十余州(日本中)どこへ行っても寝て喰って
いける平穏な国だ」と、称えた句だとされる。それが明治の世になって、天皇行幸の
際に一里塚にあっては天皇の目に触れると言う事から、この神社へ移された。宿り木
行政や権力者がつまらないことに固執するのは、
いつの時代も変わらないってことだ。
 さて、ここから暫くは山を眺め、日本の農村風景を愛でながらのどかなお散歩を楽しむ。
途中寄り道した古間神社でヤドリギの黄色い実が目に鮮やかに飛び込んできた。
高い木の上で、粘りのある実を落とし、さらに枝から枝へと子孫を残すその生命力に
ちょっぴり感心しながら、神社をを傍らに見つつ、田んぼ道を仁之倉方面へと向かう。
正面に黒姫山がどっかりとその姿を見せている。胞衣塚(えなづか) やがて、仁之倉の集落が見えてくる。
ここには一茶の母の実家宮沢家があった。 そしてここで一茶も
生まれた。すでに、家は跡形もなくなっているが、一茶百回忌の
建てられた句碑が残っている。「ともかくもあなたまかせの年の暮れ」真宗に傾倒した一茶が
長女を亡くしたあと、仏(阿弥陀様)をあなたと呼び詠んだ句と言われる。
また、真偽の程は定かでないが、宮沢家墓の横に胞衣塚(えなつか)が建っている。
本来この地方には産まれた際の胎盤やへその緒を収める胞衣塚の風習は見当たらない。
百回忌に建てられた物だとするとかなり怪しい?  仁之倉の集落から、黒姫駅までまた
田んぼを眺め、山を眺め、のんびりと季節を楽しみながらの散歩道だ。 全行程は約5km
程度で、半日で十分なのだが、途中一茶記念館周辺や仁之倉では,蕎麦屋があるので、
土地の味も楽しみつつ、ゆっくりと旅を味わっていただくのも一興だろう。 (KAZU)
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アルマナックから一茶の里(柏原)へは…お車で約7分
路線バスをご利用の場合は高原口バス停(徒歩1分)から黒姫駅行きを利用して20分(大人200円小人100円)